蒼海のプライヴァティアは2018年2月8日にサービス終了しました
この記事で紹介している「蒼海のプライヴァティア」は、2018年2月8日をもってサービスを終了しています。現在はプレイできません。
以下は、サービス終了済みタイトルの記録としてお読みください。
16世紀の海を舞台にした国産ブラウザゲームの話をしよう
「大航海時代のゲームがやりたい。でもコーエーの大航海時代Onlineはクライアントが重いし、今から始めるには敷居が高すぎる」
2015年前後、そんなことを思っていたPCゲーマーは少なくなかったはず。大航海時代Onlineは2005年からサービスを続けている老舗中の老舗で、コンテンツの厚みは圧倒的。ただしその分、新規参入のハードルも相当なものだった。クライアントのダウンロードが必要で、覚えることも多い。もっと気軽に、ブラウザだけでサクッと航海気分を味わえるゲームがあればいいのに。
そこに現れたのが「蒼海のプライヴァティア」だった。
開発元は国産デベロッパーのアピリッツ。「式姫の庭」シリーズなどで知られるブラウザゲームの開発会社だ。ブラウザだけで遊べる大航海時代モノ。Flash全盛期の空気をまとって、2015年6月30日に正式サービスを開始した。
結論から書くと、このゲームは約2年8ヶ月後の2018年2月8日に静かに幕を閉じた。ユーザー評価は5点満点中1.70。ネット上の声を集めても、終了を惜しむコメントはほぼ見当たらない。
ただ、だからといって「つまらないゲームだった」で片付けるのはもったいない。交易システムには他にない面白さがあったし、そこに至るまでの設計思想には見るべきものがあった。何が良くて、何がダメだったのか。そのあたりを振り返ってみたい。
ちなみに「プライヴァティア」とは、国家から私掠免許を得て敵国の商船を襲う武装民間船のこと。海賊と紙一重の存在だが、正規の軍事行為として認められていた。タイトルにこの言葉を選んだあたりに、開発チームの「ロマンのあるゲームを作りたい」という意気込みは感じられた。
ゲーム概要 ― 交易・海戦・投資の三本柱

舞台は16世紀、4つの国家から1つを選ぶ
蒼海のプライヴァティアの舞台は16世紀の大航海時代。プレイヤーは4つの国家(イスパニア・ポルトガル・イングランド・ネーデルラント)のいずれかに所属し、船団を率いて広大な海へ漕ぎ出す。史実に基づいた国家設定で、イスパニアなら軍事力に優れ、ネーデルラントなら交易に強いといった国ごとの特色もあった。
やることは大きく分けて3つ。
交易で物資を売り買いして資金を稼ぎ、海戦で他プレイヤーや海賊と戦い、投資で街を支配下に置く。稼いだ金で船を強くし、強くなった船でさらに稼ぐ。「金がすべてを動かす」という、ある意味リアルなサイクルがこのゲームの骨格だった。
街への投資は単なるおまけではなく、投資額の多い国家がその街を支配できるという仕組みだった。支配した街では税収が入り、交易の優遇も受けられる。国家間の投資合戦は、このゲーム独自の面白さのひとつだった。
ブラウザゲームとしてはかなり野心的な作りで、インストール不要でこれだけの要素が遊べるのは当時としては珍しかった。艦船も40種類以上が用意されており、小型の高速船から大型のガレオン船まで、用途に合わせて乗り換えることができた。
航海士 ― 50人以上のキャラとガチャ
プレイヤーの船には「航海士」と呼ばれるキャラクターを乗せることができた。航海士は50人以上が実装されており、N・R・SR・SSRの4段階のレアリティで分けられている。
航海士にはそれぞれ固有のスキルがあり、戦闘向き、交易向き、航海速度アップなど役割が異なる。複数の航海士を船に配置して、状況に応じてスキルを発動させるのが基本的な遊び方だった。SSR航海士のスキルは圧倒的に強力で、1体いるだけで海戦の勝敗が変わるほど。
入手はガチャが基本。ここがのちのち大きな火種になるのだが、それは後述する。いわゆる「排出率の壁」で、SSR航海士を引くにはかなりの課金が必要だった。
フル3Dの海戦と部位破壊
海戦はブラウザゲームとしては頑張っていた。フル3Dで描かれた船同士がぶつかり合い、「部位破壊」のシステムで敵船の帆や砲台を個別に狙える。航海士のスキルを組み合わせた戦術性もあり、ここだけ見ればそれなりに遊べる出来だった。
ただし、後述するように課金差が如実に出る部分でもあった。
シーズン制 ― 賛否が分かれた2ヶ月リセット
このゲームの特徴的な仕組みのひとつが「シーズン制」。約2ヶ月ごとにサーバーがリセットされ、全プレイヤーがゼロからやり直す形式だった。
運営側の狙いとしては「後発プレイヤーでも追いつける」「毎シーズン新鮮な気持ちで遊べる」「サーバー内の経済がインフレしない」というもの。理屈としてはわかる。オンラインゲームの宿命ともいえる「古参と新規の格差」を、定期リセットで解消しようとした。
ただ実際には、リセットのたびに積み重ねが消えることへの不満のほうが圧倒的に大きかった。2ヶ月かけて育てた船、集めた航海士、築いた資産がすべて白紙に戻る。これはモチベーションの維持が非常に難しい。ガチャで引いた航海士まで消えるのか、一部は引き継げたのかで評価が分かれるが、いずれにしても「積み上げる楽しさ」が奪われる感覚は避けられなかった。
対戦型のMOBAやバトルロイヤルなら毎試合リセットでも成り立つが、交易や投資で「じっくり積み上げる」タイプのゲームでシーズンリセットは相性が悪い。ここは設計のミスマッチだったと言わざるを得ない。
展開プラットフォーム
公式サイトのほか、ニコニコアプリ、ハンゲーム、Yahoo!ゲームなど複数のプラットフォームで展開されていた。当時のブラウザゲームとしては標準的な展開戦略で、各プラットフォームの既存ユーザーを取り込む狙いがあった。
ただし、Flash依存のブラウザゲームだったため、のちのFlash終了問題も影を落とすことになる。2015年時点ではまだFlashは現役だったが、この頃すでにHTML5への移行は業界のトレンドになりつつあった。
変動相場制 ― このゲーム最大の発明

蒼海のプライヴァティアで最も評価すべきポイントは、間違いなく交易システムだった。
通常のゲームでは、街Aで100ゴールドで買った品物を街Bで200ゴールドで売る、というルートが固定されている。一度おいしいルートを見つけたら、あとはそれを延々と繰り返すだけの作業ゲーになりがち。
このゲームは違った。「変動相場制」を採用していたのだ。
プレイヤー全体の取引量によって、各街の物資の相場がリアルタイムに変動する。みんなが同じ品物を買い占めれば仕入れ値は上がり、売り先に物が溢れれば売値は下がる。現実の経済と同じ需要と供給の原理が、ゲーム内で機能していた。
つまり、「昨日まで儲かったルート」が今日は赤字になるかもしれない。常に市場全体を見て、他プレイヤーの動向を読みながら取引先を変えていく必要がある。
これは地味だけど、本当によくできた仕組みだった。
たとえば、あるプレイヤーが「リスボンで香辛料を安く仕入れてセビリアで高く売る」という儲かるルートを見つけたとする。するとそのルートを真似するプレイヤーが増え、リスボンの香辛料の値段はどんどん上がり、セビリアでは供給過多で値が下がる。結果、一時期は大儲けできたルートが数日で使い物にならなくなる。
だから常にアンテナを張って、「今どの品物が余っていて、どこで不足しているか」を考え続ける必要があった。株式投資やFXに通じる面白さがあって、この部分だけは「ゲームとしてちゃんと面白い」と言い切れるものだった。
実際、ユーザーの声を見ても交易部分だけは高く評価されていた。
交易は面白かった。相場の読み合いがあって、頭を使う感じが良い。
経済シミュレーションとしての交易システムは秀逸。このシステムだけ別のゲームに持っていってほしかった。
ただ、この面白さを活かしきれなかった。交易で稼いだ金の使い道が海戦と投資に偏っていて、交易そのものをもっと深掘りする方向には進まなかった。造船に特化した工房を持てるとか、交易ギルドを結成して大規模な商売ができるとか、そういう発展の余地はいくらでもあったはずだ。交易が面白いからこそ、そこが惜しまれるポイントだった。
ユーザーの声 ― 圧倒的な批判の嵐
ここからは厳しい話になる。
ネット上に残っているユーザーの声を15件ほど集めたところ、批判が11件、好意的なコメントが4件。評価は1.70/5.0。この数字が全てを物語っている。
課金バランスの崩壊
60万円以上課金した。後悔している。
課金しないと話にならない。無課金で楽しめるのは最初の数日だけ。
課金の問題は深刻だった。高レアの航海士がいなければ海戦で勝てず、海戦で勝てなければ交易品を奪われる。せっかく面白い交易システムがあっても、課金者に武力で全部持っていかれるのでは話にならない。
しかもこのゲーム、PvP(プレイヤー間戦闘)が避けられない仕様だった。交易中に課金者の船団に襲われて、苦労して集めた交易品を根こそぎ奪われる。相手のSSR航海士のスキルで一方的に沈められて、為す術がない。この体験をしたプレイヤーが定着するはずがない。
60万円課金して後悔しているという声は衝撃的だ。課金させる仕組みとしては「成功」かもしれないが、ゲームとしては完全に失敗している。なぜなら、その60万円をかけた本人ですら楽しめていないのだから。課金すれば確かに強くはなる。でも対戦相手がいなくなってしまえば、強さを披露する場がない。重課金者だけが残った過疎サーバーほど虚しいものはない。
「大航海時代Onlineの劣化版」という評価
大航海時代Onlineの劣化パクリ。本家をやったほうがいい。
大航海時代の世界観を借りておきながら、あの深さがまったくない。
避けられない比較対象がコーエーの「大航海時代Online」だった。大航海時代Onlineは2005年から続く長寿タイトルで、交易・冒険・戦闘のバランスが丁寧に作り込まれている。蒼海のプライヴァティアは同じ16世紀の海を舞台にしている以上、どうしても比較される。
そして比較されるたびに「劣化版」と言われた。世界観の深さ、コンテンツの厚み、運営の丁寧さ、どれをとっても本家には及ばなかった。ブラウザで手軽に遊べるという利点はあったが、それだけでは「劣化版」の評価をひっくり返せなかった。
運営への不信感
要望を出しても反映されない。そもそも聞いているのかすら怪しい。
バグ報告しても直らない。イベントは同じことの繰り返し。
運営に対する不満も根深かった。ユーザーからの改善要望が反映されない、バグが放置される、イベントがワンパターン。公式フォーラムや掲示板での声がことごとくスルーされる状況が続いた。
小規模開発チームだった可能性はあるし、リソースの制約もあっただろう。ただ、少なくとも「聞いている」というリアクションすら見せなかったのは致命的だった。ゲーム運営において、ユーザーとのコミュニケーションは最低限の義務だ。それすらできない運営に対して、ユーザーが愛想を尽かすのは当然の結果だった。
それでも好きだった人はいた
交易で黙々と金を稼ぐのが楽しかった。PvPさえなければ神ゲーだったかもしれない。
少数だが、交易の面白さに魅了されたプレイヤーはいた。「PvPがなければ」「課金バランスさえまともなら」という条件付きの評価が目立つ。
これは裏を返せば、ゲームの根幹のアイデア自体は悪くなかったということだ。変動相場制の交易、国家間の投資合戦、16世紀の大航海時代という舞台設定。素材は良かった。問題はそれを取り巻く課金設計、PvPバランス、運営体制のすべてだった。
良い素材を持ちながら料理を間違えた、という表現が一番近いかもしれない。
なぜ2年8ヶ月で終了したのか
2015年6月にスタートし、2018年2月に終了。約2年8ヶ月の運営期間は、ブラウザゲームとしても短い部類に入る。
終了の直接的な理由は公式には明かされていないが、状況から推測できることはいくつかある。
プレイヤー人口の急減
課金バランスの問題と「大航海時代Onlineの劣化版」という評価が広まったことで、新規プレイヤーの流入が早い段階で止まったと思われる。シーズン制によるリセットも、既存プレイヤーの離脱を加速させた。
ブラウザゲームは「手軽に始められる」のが売りだが、裏を返せば「手軽にやめられる」でもある。不満を感じたプレイヤーがわざわざ留まる理由がない。特に2015年以降はスマホゲームの全盛期に差し掛かっており、PC向けブラウザゲームの市場自体が縮小傾向にあった。その中で新規獲得を続けるのは、よほどの魅力がなければ難しい。
Flash依存という爆弾
2017年7月、AdobeがFlash Playerのサポート終了を正式に発表した。2020年末をもって配布を停止するというアナウンスは、Flash依存のブラウザゲーム業界に激震を走らせた。
蒼海のプライヴァティアはFlashで動いていた。HTML5への移行には開発コストがかかり、プレイヤー数が減少傾向のゲームにその投資をする判断は現実的ではなかっただろう。Flashの終了アナウンスが2017年、サービス終了が2018年2月。タイミング的に無関係とは思えない。
ちなみにFlashの終了は他のブラウザゲームも巻き込んだ業界全体の問題で、蒼海のプライヴァティアだけの話ではない。ただ、体力のある運営元はHTML5への移行を果たした一方で、体力のない運営元はそのまま終了せざるを得なかった。
収益構造の限界
少数の重課金者に依存した収益モデルは、プレイヤー人口が減ると一気に崩壊する。無課金・微課金のプレイヤーはゲームの「にぎやかし」であり、対戦相手であり、課金者が優越感を得るための存在でもある。彼らがいなくなれば、課金者も課金する意味を失う。
60万円課金した人がいたという事実は、逆に言えばそれだけ少数のプレイヤーに収益を依存していたことの証左だ。健全なゲーム運営は、幅広いプレイヤーから少しずつ収益を上げるモデルで成り立つ。蒼海のプライヴァティアはその逆を行ってしまった。
サービス終了を惜しむ声がなかった
オンラインゲームがサービス終了するとき、通常は「あのゲームが終わるなんて」「思い出をありがとう」といった声がSNSに溢れる。10年以上続いた古参タイトルだけでなく、数年で終了した小規模タイトルでも、一定のファンが別れを惜しむのが普通だ。
蒼海のプライヴァティアの場合、そうした声がほぼ見当たらなかった。Twitterを検索しても、掲示板を見ても、サービス終了に対する反応がほとんどない。これが、このゲームの末路を最もよく表している。プレイヤーにとって、終了する頃にはもう「過去のゲーム」だったのだろう。
良いアイデア(変動相場制の交易)を持ちながら、課金設計と運営力でそれを活かしきれなかった。ブラウザゲーム市場の縮小とFlash終了の波にも飲まれた。タイミングも悪かったし、実力も足りなかった。
蒼海のプライヴァティアのPV
当時の雰囲気が伝わるプロモーション映像。交易画面や海戦のフル3D描写を確認できる。ブラウザゲームでここまでのグラフィックを実現していたこと自体は、技術的には評価できるポイントだった。
蒼海のプライヴァティアの基本情報
| タイトル | 蒼海のプライヴァティア |
|---|---|
| ジャンル | 海洋シミュレーション・ブラウザゲーム |
| 開発 | アピリッツ |
| サービス期間 | 2015年6月30日 〜 2018年2月8日 |
| プラットフォーム | PC(ブラウザ / Flash) |
| 展開先 | 公式サイト、ニコニコアプリ、ハンゲーム、Yahoo!ゲーム |
| 基本料金 | 無料(アイテム課金制) |
| ユーザー評価 | 1.70 / 5.0 |
海洋・戦略系のゲームが好きな人へ
蒼海のプライヴァティアは終了してしまったが、海洋や戦略系のゲームはまだまだ選択肢がある。
当サイトで紹介している中から、ブラウザで遊べるタイトルをいくつかピックアップしておく。蒼海のプライヴァティアとまったく同じジャンルではないが、「ブラウザで手軽に戦略ゲームを遊びたい」という人なら楽しめるはずだ。
ビビッドアーミー
ブラウザで遊べるストラテジーゲーム。陸海空の兵器を生産・合成して領土を広げていく。蒼海のプライヴァティアのような交易要素はないが、兵器の組み合わせを考える戦略性はある。ブラウザだけで手軽に遊べる戦略ゲームとして根強い人気を持っているタイトルだ。
リーグオブエンジェルズ3
こちらもブラウザ対応のRPG。ファンタジー世界で仲間を集めて冒険するスタイルで、海洋モノではない。ただ、蒼海のプライヴァティアで航海士の収集にハマった人なら、キャラ収集とパーティ編成という点で通じるものがある。
蒼海のプライヴァティアで「交易の面白さ」に目覚めた人なら、Steamで配信されている「Port Royale」シリーズや「Patrician」シリーズあたりを探してみるのもいい。ブラウザの手軽さはないが、変動相場制の交易をもっと深く、もっと本格的に楽しめるはずだ。
最後に ― このゲームが残したもの
蒼海のプライヴァティアは、正直に言って成功したゲームではなかった。ユーザー評価1.70という数字は厳しいし、サービス終了を惜しむ声がほぼなかったという事実も重い。
でも、変動相場制の交易システムというアイデアだけは、もっと評価されてもよかったと思う。プレイヤー全体の動向が相場に反映される仕組みは、ブラウザゲームとしては明らかにオーバースペックだった。サーバーサイドでリアルタイムに経済シミュレーションを走らせるのは、技術的にもコスト的にも負担が大きい。それでもこの仕組みを実装したこと自体は、開発チームの意地を感じる。
このアイデアが、もっと体力のある開発チームの手で、PvPに依存しないゲームデザインのもとで、課金に頼らないビジネスモデルで作られていたら、違う未来があったかもしれない。「たられば」を言っても仕方ないが、変動相場制の交易という仕組み自体は、今のゲーム業界でも十分通用するアイデアだと思う。
2015年から2018年。ブラウザゲーム市場がスマホゲームに押されて縮小していく過渡期に、国産デベロッパーが大航海時代のロマンを詰め込んで送り出したタイトル。志は高かったが、実行力と市場環境が追いつかなかった。
蒼海のプライヴァティアを覚えている人は少ないだろう。でも、このゲームが試みた「プレイヤー全員で動かす経済」というコンセプトは、今後どこかで、別の形で花開くかもしれない。そのときに「ああ、昔そういうゲームがあったな」と思い出す人が1人でもいたら、このゲームの2年8ヶ月にも意味はあったと言えるんじゃないか。


