絵本のような世界で300体を狩る——過疎が殺したMMORPG『ハンターヒーロー』の話

目次

サービス終了日と理由

ハンターヒーロー(Hunter Hero)は、2020年6月11日にサービスを終了した。運営はX-LEGEND ENTERTAINMENT JAPAN。日本でのサービス期間は2014年10月30日〜2020年6月11日の約5年8ヶ月。

終了理由は公式には明かされていないが、エンドコンテンツの不足による離脱、アップデートの停滞、そしてX-LEGEND JAPAN自体の事業再編が重なった結果だった。「3週間で飽きる」という声がネット上に複数残っているのが、このゲームの抱えていた構造的な問題を端的に物語っている。

「絵本の世界でモンスターハンティング」という夢

ハンターヒーローのゲーム画面

ハンターヒーローの第一印象を一言で表すなら、「かわいい」だ。

4頭身のデフォルメキャラクター。パステルカラーの世界。柔らかい光の表現。プレイヤーからは「絵本の世界に迷い込んだような美しい世界」という感想が出てくるほど、ビジュアル面での統一感があった。

原題は「狩龍戰紀」(Dragon Slayer)。台湾のX-LEGEND ENTERTAINMENTが開発した。「狩龍」——つまりドラゴンハンティングがテーマなのだが、見た目のかわいさとは裏腹に、戦闘はノンターゲティング方式を採用しているアクション寄りのMMORPGだった。

ノンターゲティングというのは、攻撃のたびに自分で照準を合わせる必要がある仕組みのこと。クリックひとつで自動的に敵に攻撃が当たる従来のMMORPGとは違って、ちゃんと敵の動きを見て、タイミングを合わせて攻撃を当てる必要がある。モンスターハンターをもっとカジュアルにしたような感覚、と言えばイメージしやすいだろうか。

実際、モンスターハンターとの比較はプレイヤーの間でもよく行われていた。結論から言えば、アクションの深みという点ではモンハンとは比較にならない。モンハンは一撃の重みとタイミングを読み合うストイックな狩猟ゲームだが、ハンターヒーローはもっとテンポが軽い。スキルを連発して派手にモンスターを倒していくMMORPG的な爽快感が売りだった。

ただ、ハンターヒーローにはモンハンにはない要素があった。

倒したモンスターが全部ペットになる——300種以上

ハンターヒーロー最大の特徴は、フィールドに登場する300種類以上のモンスターすべてを捕獲して騎乗ペットにできること。これはかなり思い切った設計だ。

普通のMMORPGだと、ペットやマウント(乗り物)は特定のクエストをクリアしたり、ガチャで引いたり、レアドロップを狙ったりして手に入れるものだ。ハンターヒーローはそのアプローチが根本的に違う。「あのモンスターかっこいいな」と思ったら、倒して捕まえればいい。フィールドで見かけるあらゆるモンスターが、潜在的にはあなたの相棒になり得る。

ドラゴンに乗って空を飛ぶこともできるし、巨大な狼に跨って平原を駆けることもできる。小さなスライム系のモンスターから、画面を覆うほどの巨大ボスまで、倒せるものは全部捕まえられる。ペットは戦闘にも参加するので、自分の好みのモンスターをパーティに加えて一緒に冒険を進められる。ポケモン的な「全部集めたい」欲求と、モンハン的な「強い敵を狩る達成感」が合わさった仕組みだ。

捕まえたモンスターはただの移動手段ではない。それぞれにステータスやスキルがあって、戦闘に連れて行けば一緒に戦ってくれる。強いモンスターを捕まえるためにパーティを組んで高難度のボスに挑む——という流れは、このゲームの基本的なサイクルだった。

この「どのモンスターでもペットにできる」というシステムは、ゲームのモチベーション設計として実によくできていた。新しいエリアに行くたびに「今度はどんなモンスターがいるんだろう」という探索のワクワク感が生まれるし、レアなモンスターを捕まえたときの達成感もある。他のプレイヤーが乗っている珍しいモンスターを見て「あれ、どこで手に入るんだ?」と調べ始める——そういうコミュニケーションの起点にもなっていた。

7つの職業——カジュアルだけど選択肢は多い

ハンターヒーローには7種類の職業が用意されていた。

戦士は近接攻撃の要。大剣を振り回して前線で戦うオーソドックスなアタッカーだ。武士も近接型だが、こちらは刀を使った連撃やカウンター攻撃に特化している。和風のモーションがかっこいいと人気があった。

ナイトはいわゆるタンク。盾を構えてパーティメンバーを守る。パーティプレイでは必須級の存在で、ナイト不足でボス戦に挑めない……というのはMMORPGあるあるだが、ハンターヒーローでも例外ではなかった。

術師は遠距離魔法アタッカー。範囲攻撃が得意で、雑魚の群れを一掃するのに向いている。修道士はヒーラー。味方を回復しつつ、バフ(強化)をかけるサポート職だ。

レンジャーは弓を使った遠距離物理アタッカー。機動力が高く、ヒットアンドアウェイの立ち回りが求められる。そしてハーミットは暗器を使ったトリッキーな職業で、毒やデバフ(弱体化)を駆使して戦う。

7職というのはMMORPGとしては多くも少なくもない数だが、ノンターゲティング戦闘との組み合わせで、職業ごとの操作感はかなり違っていた。戦士でゴリゴリ殴るのとレンジャーで距離を取って矢を射るのとでは、同じゲームとは思えないくらいプレイフィールが変わる。

特にパーティプレイでは、職業の組み合わせが攻略のカギになった。ナイトがボスのヘイトを取って前線を支え、修道士が後方から回復、術師やレンジャーが安全な位置からダメージを稼ぐ。MMORPGの「ロール制」をカジュアルなアクション戦闘に落とし込んだ設計は、ゴリゴリのエンドゲーマーには物足りなくても、「友達とワイワイ遊ぶ」用途には丁度よかった。

もっとも、ここにもハンターヒーローの弱点が潜んでいた。7職のバランス調整は決して完璧ではなく、特定の職業が明らかに強い(あるいは弱い)時期が存在した。アップデートで調整が入ることもあったが、頻度が十分とは言えず、不遇職を使っているプレイヤーのフラストレーションが溜まる場面もあった。

「ブブリ」と釣りと牧場——戦闘以外も充実していた

ハンターヒーローには戦闘以外のコンテンツも一通り揃っていた。

まずAIパートナー「ブブリ」。プレイヤー専属のNPCキャラクターで、一緒に冒険してくれる相棒のような存在だ。装備を変えたり、スキルを覚えさせたりして育成できる。ソロプレイ時の心強い味方であると同時に、着せ替え要素もあって、キャラクターカスタマイズ好きには嬉しい機能だった。

生産システムも実装されていた。素材を集めて武器や防具を作る、MMORPGではお馴染みの仕組みだ。釣りもある。ただ座って竿を垂らしているだけなのに、なぜかMMORPGの釣りには中毒性がある。ハンターヒーローの釣りも例外ではなく、戦闘に飽きたらフィールドの水辺で釣り糸を垂らしてぼんやり過ごす——そういう「何もしない時間」を楽しめる設計になっていた。

牧場コンテンツでは、捕まえたモンスターを放牧して育てることもできた。戦闘で使わないけどビジュアルが好きなモンスターを牧場に置いておく——コレクション欲求を満たすにはうってつけの機能だった。ハウジング要素も含まれていて、自分の空間をカスタマイズする楽しさがある。

このあたりの「スローライフ系」コンテンツは、かわいい世界観との相性がとてもよかった。戦闘で疲れたら牧場でモンスターを眺めて、釣りをして、ブブリの衣装を変えて。ハンターヒーローの世界に「住んでいる」感覚を味わえるのは、殺伐としたPvP中心のゲームにはない魅力だった。

ただし、こうした戦闘以外のコンテンツが充実していたことは良い面であると同時に、ある種の弱点でもあった。というのも、これだけいろいろな要素を詰め込んでいるのに、どれも「そこそこ楽しい」止まりで、「このコンテンツのためだけにログインする」レベルには達していなかった。広く浅く、という言葉がぴったりだ。

プレイヤーの声——天国と地獄

ハンターヒーローに対するプレイヤーの評価は、見事に二極化していた。

好意的な声はこんな感じだ。

絵本の世界に迷い込んだような美しい世界。グラフィックの雰囲気がとにかく良い

無課金・社会人に優しい設計で、ガチ勢じゃなくても楽しめた

ビジュアルの良さと課金圧の低さは、多くのプレイヤーが認めるポイントだった。忙しい社会人が仕事終わりにちょっとログインして遊ぶ——そういう使い方に向いていた。無課金でもストーリーを進める分には困らないし、ペット集めもコツコツやれば十分楽しめる。「課金しないと人権がない」系のゲームが多い中で、この姿勢は評価に値する。

一方、否定的な声も容赦ない。

3週間で飽きる。やることがなくなる

とにかく人がいない。マッチングが全然成立しない

モンハンと比べるとかなり簡単。歯ごたえがない

「3週間で飽きる」は複数のプレイヤーから出ている指摘で、これがハンターヒーロー最大の問題だった。序盤は新しいモンスターを捕まえたり、職業の操作を覚えたりで楽しいのだが、中盤以降にやり込み要素が急激に薄くなる。エンドコンテンツ——つまりレベルカンスト後にも長く遊び続けられるコンテンツ——が決定的に不足していたのだ。

MMORPGにおいてエンドコンテンツの重要性はいくら強調してもしすぎることはない。どんなに序盤が面白くても、「その先」がなければプレイヤーは離れていく。ハンターヒーローは序盤の魅力で人を惹きつけることには成功していたが、その人たちを長期間つなぎ止めることには失敗した。

なぜハンターヒーローは終わったのか

サービス終了の原因は、大きく分けて3つある。

第一に、エンドコンテンツの不足。

先ほども書いた通り、これが最も根本的な問題だった。レベルキャップに到達した後にやることが少なすぎた。高難易度ダンジョンやレイドコンテンツの追加が遅く、上級者が満足できるコンテンツが常に不足していた。序盤は楽しいのに中盤以降の失速が激しいという構造は、最後まで改善されなかった。

第二に、アップデートの停滞。

ハンターヒーローは台湾のX-LEGEND ENTERTAINMENTが開発しているゲームで、日本版のアップデートは台湾版に依存している。台湾側での開発が減速すると、日本版にも新コンテンツが入ってこなくなる。プレイヤーが「やることがない」と感じ始めた時期に、追い打ちをかけるようにアップデート間隔が空いていった。

新しい装備、新しいマップ、新しいモンスター。これらが定期的に追加されていれば、プレイヤーのモチベーションを維持できたかもしれない。しかし現実には、アップデートのたびに「え、これだけ?」という反応が増えていった。

第三に、X-LEGEND JAPANの事業再編。

X-LEGEND ENTERTAINMENT JAPANは、ハンターヒーローだけでなく複数のタイトルを日本で運営していた。幻想神域、セブンスダークなどがその代表例だ。しかし、日本市場でのオンラインゲーム事業は年々厳しさを増しており、採算の取れないタイトルを整理する動きが進んだ。

ハンターヒーローはその整理の中で、サービス継続のコストに見合うだけの収益を上げられないと判断されたのだろう。開発元の台湾でもアップデートが減速している状況では、日本運営だけで盛り上げるにも限界がある。

過疎化の問題も深刻だった。MMORPGはプレイヤーがある程度の人数いないと成り立たないジャンルだ。パーティを組んでダンジョンに挑む、ギルドで協力してレイドに挑戦する——こうした遊び方は、そもそも人がいなければ実現できない。ハンターヒーローは末期、ログインしても人が見当たらないという状態が続いていた。チャットが流れない、パーティ募集に人が集まらない、街を歩いても誰もいない。MMORPGにおいて「過疎」は最も残酷な死に方だ。ゲームシステム自体は動いているのに、そこに生きた人間がいない。ゲームを支える「世界」としての機能を失ってしまう。

約5年8ヶ月。オンラインゲームの寿命としては短くもないが、もう少しやりようがあったのでは——という思いが残るサービス期間だった。

海外ファンが立ち上げたプライベートサーバー

ハンターヒーローの物語は、公式サービスの終了で完全に終わったわけではない。

海外では、有志のファンが「Dragomon Hunter Reborn」というプライベートサーバーを運営している。これはハンターヒーローの海外版「Dragomon Hunter」をベースに、ファンの手で復活させたものだ。

プライベートサーバーとは、公式とは無関係に個人やコミュニティが独自に立ち上げたサーバーのこと。法的にはグレーゾーンだが、サービスが終了して公式には遊べなくなったゲームを、ファンの手で存続させようという活動はオンラインゲームの世界では珍しくない。

「あのゲームをもう一度遊びたい」という思いが、サーバー構築という技術的なハードルを越えさせている。ハンターヒーローが一部のプレイヤーにとっていかに大切なゲームだったかが伝わってくるエピソードだ。

海外版の「Dragomon Hunter」は、北米・欧州でAeria Gamesが2015年〜2016年にサービスしていた。日本版よりもさらに短命で、約1年ほどで終了している。英語圏ではMMORPG市場の競争が激しく、カジュアル路線のアジア製MMORPGは苦戦しがちだ。しかし、その短い期間にも熱心なファンがついていたからこそ、プライベートサーバーという形で復活の動きが生まれた。

ただし、プライベートサーバーは公式サービスとは異なり、運営の安定性やセキュリティの保証はない。いつ閉鎖されるかもわからないし、データが消えるリスクも常にある。利用する場合はそのリスクを理解した上で、自己責任で判断する必要がある。

X-LEGENDが作った他のゲームたち

ハンターヒーローの開発元であるX-LEGEND ENTERTAINMENTは、台湾を拠点とするオンラインゲーム開発会社だ。かわいいアニメ調のグラフィックを得意とし、日本でも複数のタイトルを展開していた。

X-LEGENDのゲームに共通しているのは、「見た目がかわいい」「カジュアルに遊べる」「序盤の敷居が低い」という特徴だ。ハンターヒーローもまさにその系譜にあるタイトルだった。

同社の代表作で、現在も遊べるタイトルとして幻想神域がある。

幻想神域はX-LEGENDの看板タイトルとも言えるアニメ調MMORPG。ハンターヒーローと同じく美麗なグラフィックが特徴で、豊富な職業とキャラクターカスタマイズが魅力だ。X-LEGENDのゲームの雰囲気が好きなら、まず試してみる価値がある。

もうひとつ、同社の作品としてセブンスダークがある。

セブンスダークはダークファンタジー路線のアクションRPGで、X-LEGENDとしてはやや異色の作品だった。ハンターヒーローの「かわいい」路線とは対照的に、こちらはゴシック調の世界観を採用している。

X-LEGENDのゲーム全般に言えることだが、「最初の数十時間はとにかく楽しい」という傾向がある。キャラクターデザインの魅力、テンポのいい序盤のレベリング、適度に新しいコンテンツが開放されていく快感。ただ、その先の「長く遊ばせる仕組み」がどのタイトルもやや弱い。ハンターヒーローはその典型例だったし、同じ問題を他のX-LEGEND作品でも感じたプレイヤーは少なくないだろう。

ハンターヒーローが好きだった人へ

ハンターヒーローの「モンスターを捕まえてペットにする」という遊びに惹かれていた人には、ジャンルは違うがLOST ARKのペットシステムも面白いかもしれない。

LOST ARKは韓国Smilegate RPGが開発した大作MMOARPGで、見下ろし型のアクション戦闘が特徴。ペットの収集・育成要素もあり、膨大なコンテンツ量でエンドコンテンツ不足とは無縁のゲームだ。ハンターヒーローで物足りなかった「やり込みの深さ」を求めるなら、選択肢に入る。

ただ、ハンターヒーローが持っていた「絵本みたいなかわいい世界でのんびり冒険する」という雰囲気は、正直なところ他のゲームでは再現しにくい。あの独特の空気感は、X-LEGENDの美術チームが作り上げた唯一無二のものだった。

「300種以上のモンスターが全部ペットになる」というコンセプトも、ここまで振り切ったタイトルはなかなか見当たらない。原神やブループロトコルのようなアニメ調MMO/アクションRPGは増えてきているが、ハンターヒーローほど「捕獲」に全振りしたゲームは出てきていない。

サービス終了から6年。「あのゲーム楽しかったな」と思い出すプレイヤーがどれだけいるかはわからない。ただ、ハンターヒーローが提示した「かわいい世界で、モンスターを狩って、捕まえて、一緒に冒険する」という遊びのかたちは、もっと深掘りされてもよかった。いつかどこかの開発会社が、このコンセプトを本気で磨き上げたタイトルを出してくれることを、密かに期待している。

ハンターヒーローの基本情報

タイトル ハンターヒーロー(Hunter Hero / 狩龍戰紀)
ジャンル アクションMMORPG(基本無料・アイテム課金)
開発 X-LEGEND ENTERTAINMENT(台湾)
日本運営 X-LEGEND ENTERTAINMENT JAPAN
サービス期間 2014年10月30日〜2020年6月11日(約5年8ヶ月)
対応プラットフォーム PC(Windows)
戦闘システム ノンターゲティングアクション
職業数 7種(戦士・術師・修道士・レンジャー・武士・ナイト・ハーミット)
モンスター数 300種以上(全種捕獲・騎乗可能)
海外版 Dragomon Hunter(北米・欧州)
非公式サーバー Dragomon Hunter Reborn(ファン運営)
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